全員『メリークリスマスっ!!』

ガラスのコップ同士が奏でる音が、軽快に室内に響いた。

今日はクリスマスということで、堀鐔学園内でパーティーを開いていた。勿論、主催はあの侑子先生だ。
テーブルの上には、皆で用意した料理がズラリと並んでいる。
といっても、大半は四月一日やユゥイ先生による手作りなので、自分達はちょっと手伝った程度なのだが。

サクラ『それしても、本当に料理上手だよね。二人とも』
ヒマワリ『ね。ユゥイ先生は、お店をやっているから上手なのは当たり前なんだろうけど…』

女子二人組は心底感心しながら、その料理を口へと運ぶ。その後に訪れるのは、なんとも言えない幸福感。思わず顔が綻んでしまう。

一方、こちらではモコナ達がチョコフォンデュを仲睦まじく食べていた。

ソエル『はい、あ~ん』
ラーグ「――ぱくっ!」

……何と言うか、世間的に表現するならば、恋人同士のような光景である。
微塵にも邪険に感じないのは、彼らが愛らしい小動物だからかもしれない。
そんな彼らを遠くから見ているのは、教員三人であった。

侑子『あらあら、モコナ達ったらラブいわねぇ』
ファイ「ですねぇ~」
黒鋼「………」

侑子とファイが微笑みあい話をしてみるが、隣の黒鋼は何の反応もない。
それを面白く思わなかったのか、ファイは敢えておちゃらけた口調で黒鋼の反応を煽る。

ファイ「え~?黒様先生、モコナ達に嫉妬してるの~?」
黒鋼「……はぁ?」
ファイ「しょうがないな~。じゃあ、そんな黒るん先生に、このオレが食べさせてあげるー」
黒鋼「要らねぇっての!!」
ファイ「わーい、黒りん怒ったー!」
黒鋼「てめぇ、待ちやがれっ!!」

予想通りの反応に満足したのか、笑顔で追いかけっこをし始めるファイ。
それを竹刀を振りながら追いかけ回す黒鋼。
その様子を侑子は、『賑やかね~』と、シャンパンを味わいながら眺めていた。

小龍「先生方は、一体何してるんだ……」
百目鬼「いつもの事だろ」
小龍「まぁ、そうだが」

それを見て、若干呆れ気味に、小龍が呟く。百目鬼は食べながらそれに応えた。
百目鬼の手に持っている皿に目を移すと、そこには沢山の種類のケーキが一つずつ乗っていた。というか、テーブルの上にあった全種類が…、と言った方が良いだろうか。

小龍「…それ全部食うのか?」
百目鬼「おう」

いつ見ても凄まじい食欲の持ち主だなと、ある意味感心してしまう。
まぁ、甘いのが苦手な自分には量とか以前の問題なんだが。
小龍が目の前のローストチキンに手をのばすと、先程まで窓辺に居た小狼が駆け寄ってきた。

小狼「ねぇ、兄さん」
小龍「なんだ?」
小狼「今日……、クリスマスってキリストの生誕日だよね?」
小龍「あぁ。…それがどうかしたのか?」
小狼「日本は仏教が中心的でキリスト教信者が少ないのに、何でクリスマスを祝うのか気になって……」
小龍「………。百目鬼、知ってるか?」

少しだけ考えてみたが、答えとなりそうなものは出てこないと判断し、隣の百目鬼に尋ねてみる。
第一、お前の方が日本に居る期間が長いだろと言いたくもなったが、敢えて何も言わないでおこう。
不意に疑問を投げかけられた百目鬼は、暫くしてから、咀嚼していた口を開いた。

百目鬼「…キリストの誕生を祝うと言うよりは、ただ単に祝い事がしたいだけなのかと」

意外とあっさりした理由だったなと思った。
……日本人ってお祭り事が好きなだけなのかもしれない。

小狼「そういうもの?」
小龍「おれに聞くな」
百目鬼「俺の家は寺だしな。…キリスト教の事は詳しくは知らない」
小龍「まぁ、そうか…」
小狼「キリスト教そのものだったら、おれ達のほうが詳しいかもね;」

そんな感じで、話に区切りがついたその時、

侑子『四月一日~!!シャンパン追加してー!!!無くなっちゃったのよね~♪』

と、陽気な声が聞こえてきた。

四月一日「はいはい、分かりましたよっ!!あーもぅ、何でクリスマスなのに…」
ラーグ「お菓子もっとー!!」
四月一日「………っ!!」
百目鬼「作れ」
四月一日「何でてめぇは偉そうなんだよっ!!!!!」

あまりの態度の大きさに、食ってかかる四月一日。
文句を言いながらも、その手元はテキパキと動いていたが。
色々な意味で器用だなと、小龍は思った。

小狼「手伝おうか?四月一日くん」
四月一日「それは助かるけど…良いのか?」
小狼「うん」
ユゥイ「お願いするね、小狼くん。じゃあ、ちょっとこっちに来て手伝ってくれるかな?」

キッチンからひょっこりと顔を出したユゥイは、にこりと小狼に微笑みかけた。

小狼「ぁ、はい」
小龍「おれも手伝いますよ」
ユゥイ「有難う」

パタパタと急ぎ足で向かう。
二人がキッチンへと行った後、モコナ達は百目鬼の近くへと寄ってきた。

ラーグ「百目鬼。向こうに侑子先生が用意した酒があるぞ」
ソエル『黒鋼先生には内緒でね』
ラーグ「呑みに行こう!!」
百目鬼「おう」



…夜は始まったばかり。
パーティーは、まだまだ続きそうだ。


12月25日。

一人の神が生を受けた日を祝福し、街が色取り取りの光に包まれる。
今宵は天上の星達も、より一層強い輝きを放っていた。

侑子『偉大な神、イエスの誕生を祝って…乾杯』


堀鐔学園は、今日も平和。




PS.
――この後、生徒達も交えた宴会が始まったとか、そうでないとか…
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