「――此処らで良いか…」

建物の壁の近くでそっと小狼を降ろし、身体を壁へともたれ掛かせる。

『……何処…?』
「街の外れにある廃墟だ」
『どうして…こんな所…』

少し荒い息を吐きながら問う。

顔はまだほんのりと色づいており、心無しかぼんやりとしているように見える。
それが否応なしに黒鋼は、今までの出来事が夢ではなく、紛れも無い現実のものだと突き付けられたような気がした。
黒鋼は小狼の瞳を見つめて
「…こんな状態のお前を連れて帰れるかよ」とだけ言い、少し荒々しく唇を重ねた。

『――ん…ぅ…』

唇を舌先でなぞる様にすると、ビクリと小狼の身体が震える。
そして、するりと舌を口腔へと侵入させると、小狼のと絡ませ、口づけをより深くした。

『ふ……ぁ…っ…』

お互いの舌が擦れ合う度に、ぞくぞくとした感覚が襲う。以前にも一度、このようなキスをされたが、今日のはその時の比ではない…。
媚薬のせいで鋭敏になっている為だろうか。
次第に頭が真っ白になってきて何も考えられなくなり、キス一つでほだされてしまう。

『あっ…、…ん…はっ…ぁ』

先程まで小狼の腕を掴んでいた黒鋼の手は、纏っていたシーツの下に滑り込み胸の飾りを捕らえていた。
片方の手で飾りを刺激され、声が出そうになった所を再びキスで押さえ付けられる。


暫くそんな状態が続き、黒鋼が口づけから解放すると小狼の顔は既に紅潮しており、瞳は涙で潤んでいた。

黒鋼は小狼の目尻に口を寄せる、と同時に涙は姿を消していた。

『ん…』
「――何をされた」
『…ぇ……?』

低い声でそう尋ねると、今度は首筋へと移動し、そこを甘噛みし、強く吸う。

『――ひぁ…っ…』
「…あの国王にだ。身体に跡を付けられた他に何かされたか?」

その問いに小狼は否定の意味を込めて首を横に振った。

「口づけは…」
『ずっと…手で口を塞いでいたので…大丈夫……でした』
「そうか」
『…ぁ、あの……黒鋼さん』
「何だ」
『どうして……ぉ…おれに…こ…っな……ぁ』

自分が言葉を発しようとしているのにも関わらず、黒鋼はそっと、まるで割れやすい陶器を扱うかのように丁寧に身体に触れてくる為、途切れ途切れにしか話せなくなってしまう。
そのさわさわとした感触でさえも快感に変えてしまうこの身体に、小狼は嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
琥珀色の瞳から涙が零れ、頬を伝う。

『――っ…ひっ…く…』
「…泣くな」
『だ…って……ぇ…』

嗚咽しながら言葉を紡ぐ小狼の涙を、黒鋼は手で拭ってやる。
だが、次から次へと溢れ出してくるそれを小狼は抑えることが出来なかった。
黒鋼はそれをこの行為への拒絶と捉えたのだろう。触れていた手を離すと
「…嫌なら、やめるか?」
と小狼に問いた。

「媚薬が効いている状態で放置されたら辛いかと思ったんだが、こっちの方が嫌か?」
『…違っ……そうじゃなくて』

つい自分の口から出た言葉に一瞬間驚いてしまったが、そのまま続ける。

『……黒鋼さんに…っ…迷惑掛けたくな…い』

ギュッと目を瞑ってそう訴えると、「――言ったな?」という声と共に身体を引き寄せられ、壁とは反対側へと押し倒されてしまった。
突然の出来事に思わず目を見開くと、そこにはいつに無く真剣な眼差しで自分を見下ろす黒鋼の姿があった。深紅の瞳で見つめられ、小狼は視線を逸らせなくなる。

『…ぁ…の……?』
「本当は軽く付き合う程度のつもりだったんだが、…お前がその気なら話は別だ」
『えっ』

無理して自分に付き合っていると思い込んでいた小狼は、黒鋼の言葉を信じることが出来なかった。だが、あながち冗談で言っている訳ではなさそうだ。

「――小狼」
『は、はい』

急に、呼ばれなれない人に名前で呼ばれ、変にかしこまってしまう。そして、黒鋼が耳元で何か囁くと、カーッと小狼の顔が赤みを帯びた。

「…嫌ならしなけりゃ良い。だが、もしその先を望むのなら―――責任はとれねぇ。
それでも良いか?」

その問いに少々戸惑いを交えながら、小狼は小さく頷いた。
そして、小声で
『は、初めてするので…変でも何も言わないで下さい……。…あと、目……瞑って』
と言うと、上半身を起こして、黒鋼の服を掴む。

黒鋼は言われた通りに目を瞑っている。少しの間、小狼はどうしようか迷っていたが、深呼吸をして黒鋼に触れるだけのキスをした。

『――ん…』

ほんの数秒間…5秒も経っていない程の短い時間の後、小狼は顔を黒鋼から遠ざける。心臓は早鐘を打っていて、自分がどれだけ緊張していたかが伺えた。

『……はぁ』

胸に詰まっていた息を吐くと、黒鋼がそこに耳を当ててきた。

『く、黒鋼さんっ!?』
「――すげぇ音だな」
『ゎ…笑わないで下さいよ…』
「それじゃ――」
『――ぁ……っ』

黒鋼は軽くたち上がっている胸の飾りを舌で刺激してやる。それを今度は口に含み、きつく吸い上げると一層高い声が小狼の口から発せられた。

『やぁ――っ…はっ…ぁ…』
「……始めるとするか」




小狼の身体に付けられている赤い跡の上から、既成事実を塗り替えるかのように皮膚を吸い上げ、次々と斑点を辿ってゆく。
その合間に、そろりと脇腹を撫でてやると、小狼は小さく身体を捩った。
その反応に内心ニヤリとしながら、下の方へ手を伸ばしやんわりと小狼の自身に触れてみる。
そこは、半ばたち上がりかけており、先端からはとろとろとした先走りが溢れていた。

『や、…だ』
「こんなになってんのに、素直じゃねぇな。きついだろ?今抜いてやるよ」
『ぁ…や、触らな…で…っ』

涙目で訴えられても大して効果など無いのだが…。そう思っていた黒鋼に、ふと、ある考えが浮かんだ。手を離し、小狼の顔を見ると、口角を上げて
「……なら、自分でやるか?」と意地悪く言ってみる。

『―――っ!?』

その一言で、小狼の顔は一気に上気した。
視線は次第に右へと逸れていき、やがて小さく口を開いたが声が小さ過ぎて何を言っているのか分からなかった。

聞き返そうかと思った黒鋼だったが、ひとつだけ自分なりの結論が出たので小声で尋ねてみる。すると顔を赤らめながら、静かにコクリと頷いた。

「まさかとは思っていたが、……本当かよ」
『……す、すみません…っ』
「いや、謝られても困るんだが…」

実は、今まで一度もそのような行為をしたことが無かったのである。
確かに、サクラに好意を寄せてはいるが、そんな対象に見れるわけが無い。夢精なら経験した事があるが、その度に自己嫌悪に陥ったくらいだ。

黒鋼は大きく溜め息をつくと、小狼の手に自分の手を重ね、再びニヤリとして言った。

「なんなら教えてやろうか?」
『え!?…な、何言って――』
「一度もやった事がねぇんならやり方も分からねぇんだろ。この俺が手取り足取り教えてやるよ」

そう言って、黒鋼は小狼の手を掴み、小狼自身へと宛行う。そして離す事が無いように、その上から自分の手で押さえた。

『んっ……』

ぴくっと小さく身体が跳ねる。手の平からは、そこが脈打っているのが、はっきりと伝わってきて…。
小狼は羞恥に赤くなるが、いつまでもこのままでは埒が明かない。ただ、自分ではどうする事も出来ないため、縋るような目で黒鋼を見た。

「…俺が動かす通りにしろ」

そう言い放つと、ゆっくりとその手を上下に動かしはじめた。それに合わせて、小狼からくぐもった声が漏れる。

『…ん…あ……っ…』

敏感な部分をなぞられ、潤んだ先を指の腹で撫でられる。そのせいで溢れ出ていた体液が黒鋼の指に纏わり付き、次第に動きは滑らかになっていく。
誰も居ない廃墟に、くちゅくちゅという濡れた卑猥な音と、少年の喘ぎ声だけが響いた。その音に頭がおかしくなってくる。
段々と身体が快楽に支配されていき、何かしらを考えている余裕が無くなってくると、小狼は黒鋼に全てを委ねる事にした。
















『あ、ぁ…んっ!や……ぁ』

初めよりも嬌声が上がるようになった頃。黒鋼はその動きを更に速め、小狼を限界まで高めようとする。
小狼は表情を歪ませ、生理的な涙を浮かばせ、必死に堪えている様子だった。

『っ…く、くろが…さ…ぁ』
「逝くんなら逝け」
『ぁ、やっ…よごれ…る…っ』
「いいから」

そう言って、片手を小狼の手から離し、指で先端を軽く引っ掻くように刺激する。すると小狼の腰が大きく跳ね上がった。

「…小狼」

黒鋼が耳元でそう囁くと、指先からぞくぞくとした痺れが走り、鼓膜に息を吹き込まれると、内腿が強張り下肢に力が籠った。

『や、あぁあ、ぁ…っ』

何度か強く扱かれ、軽いハーレションが起こる。小狼は、そのままくたりと黒鋼の身体にもたれ掛かった。
はぁはぁ…と肩で息をしている小狼の目は、とろんとしていて焦点が定まっていないように見えた。
どこか気分がふわふわとしていて、此処に居る事すらあやふやに感じられる。だが、すぐに現実へと連れ戻された。
黒鋼は手に掛かっている白濁を指先に付けると、それで後ろの蕾を触ってきた。突然、思ってもいない所を触れられ、悲鳴にも似た声が出てしまう。

『ひっ!?―黒鋼さん、ど、何処触って――』
「あぁ?―――何だ、お前。そんな事も知らねぇのかよ」
『…ぇ?』
「男同士はなぁ、ここで繋がるんだ」
『……え!?』

何がなんだか分からないが、とりあえず、そういう事らしい。
黒鋼は小狼を引き寄せ、念入りに入口を解していく。
くすぐったいような感覚に少し身じろぐと、その拍子に指先が中に入ってしまった。

『……ぁ』
「力抜いてろ」

黒鋼はそう呟くと、指で探りながら奥へと進む。
本来何かを受け入れるように造られていない為、中で異物がうごめいているのは、正直良いとは言えない。

『…気持ち悪…ぃ』
「次期に良くなる」

滑(ぬめ)りがある為、あまり痛みは感じないが、不快感だけは拭えない。
目を瞑り、眉を顰(ひそ)めて堪える。すると、黒鋼の指先がとある一点を掠めた。

『――あっ!?』

突然の感覚に、黒鋼の衣服を掴んでいた手はピクリと動き、閉じていた瞳は開かれた。

「此処か?」

黒鋼は口の端を上げながら、何度もその場所を刺激する。その度に小狼から甘い声が零れた。

『ぁ……やっ…あぁ』

強張っていた身体からは力が抜け、締め付けもだいぶ緩くなった。
黒鋼は指の数を二本に増やし、それを中でバラバラに動かす。気が付けば萎えていた自身は硬度を取り戻し始めていて…。

『…そろそろいいか』

黒鋼が呟くと、ずるりと指が引き抜かれた。
先程までとは打って変わり、喪失感に襲われた内壁はひくひくと小刻みに震えている。

『っ……?』

カチャカチャという音がしたかと思うと、すぐさまそこに熱いものが宛がわれた。

「――挿れるぞ」
『ぁ、え…!?待っ――ぁあっ』

小狼の制止の言葉を聞かずに、黒鋼は一気に自身を挿入する。
一瞬、これから起こる事を考えてしまったせいで身体が少し強張ってしまい、引き裂かれるような痛みが生じた。

『―――つぅっ…』

指とは比べものにならない質量に、息が詰まる。

「くっ…、息吐いて力抜け…」
『っはぁ…。は…っ、……ぁ』

言われた通りに息を吐くが、なかなか身体はいうことを聞いてくれない。
それどころか、どくんどくんと黒鋼のが脈打っているのが伝わってきて。それを変に意識してしまい、更に締め付けてしまう。
黒鋼は仕方ないと呟き、小狼の自身に軽く触れ刺激を与える。

『んっ…あっ、…ゃぁ…』
「そっちに集中してろよ」
『ぇ…?――っあぁ』

小狼の注意が別の所へと移ったとたん、締め付けが弱くなる。それを黒鋼は見逃さず、繋がりをゆっくりと揺さ振ってきた。
それでも自身に触れる事を止めてはくれない。前と後ろを同時に弄られ、どうしようも無く感じてしまう。
いつの間にか身体からは力が抜けていて、それが少し心許なくて、小狼はシーツをギュッと握り締めた。 

『ぁ…やっ、あぁ…ぁ…ん』

幾分か解され、柔らかくなったそこを徐々に大きく揺らしていく。いつしかそれは抽挿に変わり、内壁を抉るように擦り付けられる。
先端で先程見つけた箇所を突く度に、小狼から嬌声が零れた。

『あっ、あぁ…ゃ、く、ろ…ねさっ…ぁ…』
「なんだ」
『も…っ、む…り…っ……ぁ、―――ん…ぅ』

小狼が、黒鋼の方に顔を向けて目に涙を浮かべて懇願すると、動きは、ほんの少しの間だけ止んだ。かと思うと、くるりと身体を反転させられ、再び向き合う格好になる。
そして、ゆっくりと唇同士が重なり合った。
そのままの状態で、また、黒鋼は繋がりを動かすのを再開させる。キスで口を塞がれている為、声は出なくなったが、そのかわり頭がクラクラとする。

『…ふっ…ぅん…ぁ……っ』

何かに縋るようにして、黒鋼へと手を伸ばそうとする。すると、黒鋼は小狼の腰を掴み、自分の方へと引き寄せ、内壁を穿つ動きを更に激しくした。
その事に驚いたせいか、小狼は思わず身体を仰け反らせてしまった。口を抑えるものは何も無くなり、艶を帯びた高い声が断続的に廃墟に響く。

『あ、ぁあっ、やぁあ…ぁ』
「っ…もう出せ」

屹立の先端に擦られる場所が変わり、また新たな快感が湧き上がってきた。小狼は黒鋼の肩に掴まり、それをなんとか堪えようとするが、容赦なく追い上げられ思考までもが霞んでいく。

『はぁっ、ぁあ…やっ、あぁ―――…っ!!』
「くっ――」

一際強く突き上げられ、一瞬意識が飛ぶ。少し後に、小狼の中で黒鋼も熱を吐き出した。
気が付いた時には、下肢はびくびくと痙攣していて、白濁がぽたぽたと流れ落ちていた。
荒い息を鎮めさせようとしていたら、途端に眠気が襲ってきた。意識していないと瞼が重くて目を開けていられない。
うとうとしていたら、髪の間に黒鋼の大きな手が差し込まれ、低く、優しい声音で「寝ろ」と呟かれた。そうされると、何故なのか分からないが、心の底から安心できる気がする。
心地良い気分の中、小狼はゆっくりとその瞳を閉じた。
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