フェニカ国に留まって7日目。
というのも、この国の居心地が良いからか、と聞かれるとそうではなく…。
実はこの国に、サクラ姫の羽根が有る事が分かっていた。
しかし、とても厄介な所に有る為、なかなか動く事が出来なかったのである。
一般人なら立ち寄る事があまりに無いであろう場所…。
そして、警備が国の中でも一番厳しいであろう場所…。
まぁ、国の重要人物が居れば、自然とそうなるものなのだが。
…お分かり頂けただろうか?
そう、羽根はこの国の城の中に有ったのだ。
王族が暮らす、その城に。
城に侵入する為に、今まで街の中で情報収集をしてきた。
すると、
「城の警備は確かに厳しいが、王様は心優しいお方だから話し合えばなんとかなるかもしれない」
という答えが返ってきたのだ。
下手に敵地に飛び込んでも、それは良い策とは言えない。
それに、無益な戦いは避けたかった。
黒鋼は少し不満げだったが。
『それでは行ってきます。…姫と一緒に残っていてくれ、モコナ』
そして今日が謁見の日。
時間帯が夜遅くだった為、サクラ姫とモコナはそのまま残ってもらう事にした。
二人では少し心配だったので、ファイも此処に残る事にした。
『気をつけてね』
『大丈夫だよ。少し、話してくるだけだから』
そう言ってモコナの頭を軽く撫でると、小狼は黒鋼と一緒に城の方へと向かって行った。
「羽根、返してもらえると良いねぇ」
『うん』
『…はい』
暗闇へと消えていく二人の姿を見て、サクラは浮かない表情をして言った。
『…何だろう。胸騒ぎがする』
―――王宮前
『すみません。11時からの謁見を希望していた者ですが…』
「あぁ、陛下から話は伺っている。入りたまえ」
『はい、有難うございます』
門番に分厚く重そうな扉を開けてもらい中に入る。
城の中は、きらびやかな装飾品で溢れており、どれ程裕福な暮らしをしているのかが見てとれる。
―――このなかの…ほんの少しを換金して、路地裏に住んでいる人々に与えたら、あの人達も普通の生活が送れるだろうに…
『小狼様と黒鋼様ですね?お待ちしておりました』
そんなことを思っているうちに可愛らしい女性がやって来た。
この城に仕える者だろうか。
丁重に小狼の手をとると、
『陛下に、貴方様だけを通すよう言われておりますの』
と微笑んで言った。
『えっ?……おれだけ…ですか?黒鋼さんは――』
『黒鋼様には、別のお部屋でお待ち頂きます』
「……何故だ?」
『私には分かりません。陛下が私達のような使用人などにお教えして下さるとでも?』
怪訝そうな顔で尋ねる黒鋼とは正反対に、優しげな笑みを絶やさない使用人。
接客をする人間だからなのだろうが、今はそれがとても不気味に思えて仕方ない。
『さ、御案内致します』
『は、はい。行ってきます。黒鋼さん』
「おう」
そして小狼は、使用人に連れられ、とある部屋の前へと辿り着いた。
『では、私はここで』
『有難うございました』
使用人はペコリと一礼して、別の所へと行ってしまった。
『…入って良いんだよ…な?』
ここで立っていても仕方ないので、意を決して扉を叩く。
すると、扉がガチャリと音を立てて開いた。
そこにいたのは、40歳前後の男性…多分、この人が国王様なのだろう。
『あ、あの…』
「君が次の謁見希望者か。とりあえず、中に入りたまえ」
『…失礼致します』
(謁見って普通はこんな部屋でやらない気がするんだけど…)
少々戸惑いながら部屋の中に入ると、直ぐに扉は閉じられてしまった。
テーブルの上に、紅茶が二つ乗っている。
使用人が用意したのだろうか?
椅子に座るよう促された小狼は、それに従った。
そして、紅茶を一口飲んで、小狼は本題であるサクラの羽根について話しはじめた。
―――数分後
「ふむ…。なるほどな」
『ですから、その羽根を…返して頂けませんか?』
「別に返してやっても良いが」
『本当ですかっ!?』
「…少しばかり条件があるな」
『……条件…?』
「それはな………」
『………っ!??』
王が耳元で口にした言葉に小狼は驚愕し、思わず後退りしてしまう。
だが、椅子が邪魔をしてそれは叶わなかった。
『…ほ、本気で…おっしゃってるんですかっ……?』
「おや?あれ程の価値が有る羽根をそれだけで返してやろうと言っているんだが…。…悪い話では無いだろう?」
『………っ』
話し合いで解決する…。
その考え自体が甘かったのだ。
この国では、サクラの羽根はとてつもなく高価な物らしい。
それを、簡単には手放さない事など、少し考えたら判るだろうに…。
王は小狼に近づくと両腕を掴んで壁へ身体を押し付けた。
―――さっきから、身体が思うように動かない…。
今も、押し返せそうとしているのに腕に力が入らないのだ。
「そろそろ薬も効いてきたようだな…」
王は、そんな小狼の様子を見て口角を上げてそう言った。
(くすり…?……まさか、紅茶の中に…!?)
掴んでいた小狼の両腕を頭の上でひとまとめにすると、あいたほうの手で小狼の頬に触れる。
『……ぅ…』
「さぁ、どうする?……我に身体を明け渡すか?」
『――嫌だ、と言ったら?』
自分が命令に逆らう事で、自分に他の罰が与えられるならそれでも構わない。
賭けに出ても損は無いだろう。
だが、どうやら小狼のその考えは既に読まれていたらしい。
王は、小狼に選択肢を用意するつもりは最初から無かった。
「……その姫に刑罰を与える…というのはどうだ?」
『なっ……!!』
「お前は、余程その姫が大切のようだ…。ならばお前を罰するよりも、そちらの方が我にとって都合が良い」
『…くっ』
サクラの事を話に上げられてしまい、小狼はこれ以上何も言えなくなってしまった。
それに何だか、体温が上がっていっているような感じがして、頭がぼんやりしてきた。
――くすりの影響…なのか?
「それで…どうする?」
『…………。――分…かりました…』
それだけ言うと、王は小狼を抱き抱え、すぐ近くに在るベッドへと降ろした。
「…最初から従っていればいいものを。もう少し素直な性格かと思っていたが、案外強情なのだな」
そう言って小狼の脇腹をそろりと撫でた。
『……あっ…ゃ…――!?』
自分から無意識に出てきた声に驚き、直ぐに両手で口を塞ぐ。
「神経が過敏になってるはずだ。何せ媚薬を飲んだのだから」
『―――!!?』
その一言で、やっと自分の身体に何が起きてるのかが理解できた。
身体に力が入らないのも、何故か妙に熱っぽいのも…。
『…ふっ……っ』
そして、
呼吸が荒いのも…全て……。
衣服は上から順々に取り払われていき、肌が見える度に触られ、吸われ、跡を付けられ……。
そして、終いには裸体にYシャツのみという何とも言えない様な格好になってしまった。
そのシャツも、はだけてしまっている為、役割を果たせていない。
ほんのりと紅く染まった肌には、幾つかの斑点が浮かんでいる。
顔は上気し、目には生理的な涙を浮かべ、今もなお、両の手で口を押さえ付けていた。
―――誰か…。
これから起こる事を思うと、そんなことを思わずにはいられなかった。
判っている。
助けに来る人などいない…。
だが
願わずにはいられなかったのだ
目尻から一粒の涙が零れ落ち、小狼は祈るように、強く想った。
―黒鋼さんっ――
バタンっっ!!!!!!!
乱暴な音を立てて、部屋の扉が開く。
…正確に言えば蹴破られた。
音の方へと顔を向けると、そこには息を切らした男性――黒鋼が居た。
どうやら、必死に小狼の居場所を探していたようだ。
片手には光り輝く物、サクラ姫の羽根を持っていた。
『――くろがねさっ…』
自然と涙声になってしまい、最後まで声に出来なかった。
黒鋼は小狼の姿を見て、怒りを覚えたのだろう。
すぐさま国王を後ろ手に縛り、鳩尾に一発の蹴りをいれ、その後、首の後ろを叩き気絶させた。
「…とりあえず、巻いとけ」
そう言って、近くに有ったシーツを小狼に投げ渡す。
「立てるか?」
『…なんとか』
「…いや、俺が背負った方が早いか」
黒鋼は小狼の腕をぐいっと力強く引くと、軽く小狼の喉の奥が鳴る。
『―――んっ…』
まだ媚薬が効いているらしく、何でも無い些細な刺激にさえ敏感に反応してしまう。
それを黒鋼に悟られないようにするつもりだったが、鋭い黒鋼が気付かないわけが無く。
「お前…まさか」
『…ぃ、いいから早く…逃げま…しょう……』
「…そうだな」
黒鋼は小狼を背負い、城から羽根を奪還することに成功した。
というのも、この国の居心地が良いからか、と聞かれるとそうではなく…。
実はこの国に、サクラ姫の羽根が有る事が分かっていた。
しかし、とても厄介な所に有る為、なかなか動く事が出来なかったのである。
一般人なら立ち寄る事があまりに無いであろう場所…。
そして、警備が国の中でも一番厳しいであろう場所…。
まぁ、国の重要人物が居れば、自然とそうなるものなのだが。
…お分かり頂けただろうか?
そう、羽根はこの国の城の中に有ったのだ。
王族が暮らす、その城に。
城に侵入する為に、今まで街の中で情報収集をしてきた。
すると、
「城の警備は確かに厳しいが、王様は心優しいお方だから話し合えばなんとかなるかもしれない」
という答えが返ってきたのだ。
下手に敵地に飛び込んでも、それは良い策とは言えない。
それに、無益な戦いは避けたかった。
黒鋼は少し不満げだったが。
『それでは行ってきます。…姫と一緒に残っていてくれ、モコナ』
そして今日が謁見の日。
時間帯が夜遅くだった為、サクラ姫とモコナはそのまま残ってもらう事にした。
二人では少し心配だったので、ファイも此処に残る事にした。
『気をつけてね』
『大丈夫だよ。少し、話してくるだけだから』
そう言ってモコナの頭を軽く撫でると、小狼は黒鋼と一緒に城の方へと向かって行った。
「羽根、返してもらえると良いねぇ」
『うん』
『…はい』
暗闇へと消えていく二人の姿を見て、サクラは浮かない表情をして言った。
『…何だろう。胸騒ぎがする』
―――王宮前
『すみません。11時からの謁見を希望していた者ですが…』
「あぁ、陛下から話は伺っている。入りたまえ」
『はい、有難うございます』
門番に分厚く重そうな扉を開けてもらい中に入る。
城の中は、きらびやかな装飾品で溢れており、どれ程裕福な暮らしをしているのかが見てとれる。
―――このなかの…ほんの少しを換金して、路地裏に住んでいる人々に与えたら、あの人達も普通の生活が送れるだろうに…
『小狼様と黒鋼様ですね?お待ちしておりました』
そんなことを思っているうちに可愛らしい女性がやって来た。
この城に仕える者だろうか。
丁重に小狼の手をとると、
『陛下に、貴方様だけを通すよう言われておりますの』
と微笑んで言った。
『えっ?……おれだけ…ですか?黒鋼さんは――』
『黒鋼様には、別のお部屋でお待ち頂きます』
「……何故だ?」
『私には分かりません。陛下が私達のような使用人などにお教えして下さるとでも?』
怪訝そうな顔で尋ねる黒鋼とは正反対に、優しげな笑みを絶やさない使用人。
接客をする人間だからなのだろうが、今はそれがとても不気味に思えて仕方ない。
『さ、御案内致します』
『は、はい。行ってきます。黒鋼さん』
「おう」
そして小狼は、使用人に連れられ、とある部屋の前へと辿り着いた。
『では、私はここで』
『有難うございました』
使用人はペコリと一礼して、別の所へと行ってしまった。
『…入って良いんだよ…な?』
ここで立っていても仕方ないので、意を決して扉を叩く。
すると、扉がガチャリと音を立てて開いた。
そこにいたのは、40歳前後の男性…多分、この人が国王様なのだろう。
『あ、あの…』
「君が次の謁見希望者か。とりあえず、中に入りたまえ」
『…失礼致します』
(謁見って普通はこんな部屋でやらない気がするんだけど…)
少々戸惑いながら部屋の中に入ると、直ぐに扉は閉じられてしまった。
テーブルの上に、紅茶が二つ乗っている。
使用人が用意したのだろうか?
椅子に座るよう促された小狼は、それに従った。
そして、紅茶を一口飲んで、小狼は本題であるサクラの羽根について話しはじめた。
―――数分後
「ふむ…。なるほどな」
『ですから、その羽根を…返して頂けませんか?』
「別に返してやっても良いが」
『本当ですかっ!?』
「…少しばかり条件があるな」
『……条件…?』
「それはな………」
『………っ!??』
王が耳元で口にした言葉に小狼は驚愕し、思わず後退りしてしまう。
だが、椅子が邪魔をしてそれは叶わなかった。
『…ほ、本気で…おっしゃってるんですかっ……?』
「おや?あれ程の価値が有る羽根をそれだけで返してやろうと言っているんだが…。…悪い話では無いだろう?」
『………っ』
話し合いで解決する…。
その考え自体が甘かったのだ。
この国では、サクラの羽根はとてつもなく高価な物らしい。
それを、簡単には手放さない事など、少し考えたら判るだろうに…。
王は小狼に近づくと両腕を掴んで壁へ身体を押し付けた。
―――さっきから、身体が思うように動かない…。
今も、押し返せそうとしているのに腕に力が入らないのだ。
「そろそろ薬も効いてきたようだな…」
王は、そんな小狼の様子を見て口角を上げてそう言った。
(くすり…?……まさか、紅茶の中に…!?)
掴んでいた小狼の両腕を頭の上でひとまとめにすると、あいたほうの手で小狼の頬に触れる。
『……ぅ…』
「さぁ、どうする?……我に身体を明け渡すか?」
『――嫌だ、と言ったら?』
自分が命令に逆らう事で、自分に他の罰が与えられるならそれでも構わない。
賭けに出ても損は無いだろう。
だが、どうやら小狼のその考えは既に読まれていたらしい。
王は、小狼に選択肢を用意するつもりは最初から無かった。
「……その姫に刑罰を与える…というのはどうだ?」
『なっ……!!』
「お前は、余程その姫が大切のようだ…。ならばお前を罰するよりも、そちらの方が我にとって都合が良い」
『…くっ』
サクラの事を話に上げられてしまい、小狼はこれ以上何も言えなくなってしまった。
それに何だか、体温が上がっていっているような感じがして、頭がぼんやりしてきた。
――くすりの影響…なのか?
「それで…どうする?」
『…………。――分…かりました…』
それだけ言うと、王は小狼を抱き抱え、すぐ近くに在るベッドへと降ろした。
「…最初から従っていればいいものを。もう少し素直な性格かと思っていたが、案外強情なのだな」
そう言って小狼の脇腹をそろりと撫でた。
『……あっ…ゃ…――!?』
自分から無意識に出てきた声に驚き、直ぐに両手で口を塞ぐ。
「神経が過敏になってるはずだ。何せ媚薬を飲んだのだから」
『―――!!?』
その一言で、やっと自分の身体に何が起きてるのかが理解できた。
身体に力が入らないのも、何故か妙に熱っぽいのも…。
『…ふっ……っ』
そして、
呼吸が荒いのも…全て……。
衣服は上から順々に取り払われていき、肌が見える度に触られ、吸われ、跡を付けられ……。
そして、終いには裸体にYシャツのみという何とも言えない様な格好になってしまった。
そのシャツも、はだけてしまっている為、役割を果たせていない。
ほんのりと紅く染まった肌には、幾つかの斑点が浮かんでいる。
顔は上気し、目には生理的な涙を浮かべ、今もなお、両の手で口を押さえ付けていた。
―――誰か…。
これから起こる事を思うと、そんなことを思わずにはいられなかった。
判っている。
助けに来る人などいない…。
だが
願わずにはいられなかったのだ
目尻から一粒の涙が零れ落ち、小狼は祈るように、強く想った。
―黒鋼さんっ――
バタンっっ!!!!!!!
乱暴な音を立てて、部屋の扉が開く。
…正確に言えば蹴破られた。
音の方へと顔を向けると、そこには息を切らした男性――黒鋼が居た。
どうやら、必死に小狼の居場所を探していたようだ。
片手には光り輝く物、サクラ姫の羽根を持っていた。
『――くろがねさっ…』
自然と涙声になってしまい、最後まで声に出来なかった。
黒鋼は小狼の姿を見て、怒りを覚えたのだろう。
すぐさま国王を後ろ手に縛り、鳩尾に一発の蹴りをいれ、その後、首の後ろを叩き気絶させた。
「…とりあえず、巻いとけ」
そう言って、近くに有ったシーツを小狼に投げ渡す。
「立てるか?」
『…なんとか』
「…いや、俺が背負った方が早いか」
黒鋼は小狼の腕をぐいっと力強く引くと、軽く小狼の喉の奥が鳴る。
『―――んっ…』
まだ媚薬が効いているらしく、何でも無い些細な刺激にさえ敏感に反応してしまう。
それを黒鋼に悟られないようにするつもりだったが、鋭い黒鋼が気付かないわけが無く。
「お前…まさか」
『…ぃ、いいから早く…逃げま…しょう……』
「…そうだな」
黒鋼は小狼を背負い、城から羽根を奪還することに成功した。
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