ヒマワリ『でね、そのお屋敷の一番奥に………』
林子『……うわっ、本当に?』

――只今、教室の掃除中。
話をしながら作業を進める女子達は、先程まで恋愛話をしていたみたいだが、今は、昨日やっていた心霊現象の番組の話で盛り上がっているらしい。

ヒマワリ『分からないけど、本当だったら楽しいよね』
林子『ヒマワリは本当にそーゆーの好きだよねぇ。…そういえば、サクラちゃんは、幽霊とかみえるんだっけ?』

二人のやり取りを、机を元の位置に戻しながら聞いていたサクラ。
林子が瞳を輝かせて尋ねると、少し困った様な表情をして、サクラが口を開く。

サクラ『…うん。たま~に、ね。いつもってわけじゃ無いの』
林子『ふーん…?でも、視えるんだよね!!だったらさ、サクラちゃんに確かめてもらおうよ~』

と、ノリノリな林子だったが、

ヒマワリ『…林子ちゃん、話ちゃんと聞いてた?今の怪談、外国の話だよ?』
林子『あれ?嘘っ!??』

ヒマワリのその一言で、一気にクールダウンしたらしく、肩をがっくりと下げる。

『九軒さん、最初に言ってたよ?』

小狼が、少し遠慮がちにそう付け足すと、納得のいかない顔をする林子。
暫く、小狼と一方的なにらめっこをしていたが、いきなり『はぁ』と息を吐いた。

林子『小狼がそう言うなら、言ってたんだろうね……』
ヒマワリ『というか、ごめんね。小狼くん』
『何が?』

先程までの笑顔を曇らせ、謝罪の言葉を口にするヒマワリ。
小狼は、箒と塵取りで、綿ぼこりなどを取りながら、顔だけをこちらに向け応える。

ヒマワリ『関係無いのに、手伝わせちゃって…』

今週のC組の教室の割当て当番は、サクラ・ヒマワリ・林子・紅榴の四人だったのだが、面倒臭がり屋な紅榴が掃除をサボってさっさと帰宅してしまったのだ。
別に三人でも出来なくは無いが、サボるなんて考えられないっと、女子達が憤慨していた所に、小狼が自ら手伝うと申し出たのである。
それでも、やはり押し付けてしまったような気分になるらしい。

『大丈夫だよ。気にしないで』
ヒマワリ『でも…』
『おれから言い出したんだし』
林子『そうだって!素直に喜んでおこ~よ』
『瀬戸さんの言う通りだよ』
林子『小狼、苗字で呼ばないでよ?』
『……り、林子さん』

あ、しまった……という感じに言い直す小狼。

(林子さんは苗字を呼ばれるの嫌がるんだったっけ……)

過去に、自分はアイドルだから、名前の『林子』を呼んでほしいと言われていた。
別に『瀬戸』という苗字が嫌いなわけでは無いらしい。
ただ単に、『林子のほうが可愛いじゃないっ!』…とのこと。

林子『ふふっ、よろしい』

満足そうに微笑む林子。
それに、ホッと胸を撫で下ろす小狼。

塵取りに集めた綿ぼこりをゴミ箱に入れようと窓側に行く…と、ある人影が窓越しに視界の端に入った。
つい、足がとまってしまう。

サクラ『小狼くん?』

不思議に思ったサクラが、小狼の傍へと歩み寄る。
そして小狼の視線の先を見つめると、

サクラ『…あ、小龍くん』

そこには、小狼の双子の兄である小龍の姿があった。
……しかし、それだけではなくて。

サクラ『あれ?隣にいる女の子、ひょっとして…』
林子『A組の子だね』
サクラ・小狼『わっ!??』

突然背後から声を出されたせいで、ビクリと身体を強張らせてしまう二人。
それを気にせず、林子は開いていた隣の窓から、身を乗り出してジッと観察し始めた。

ひまわり『林子ちゃん、あの子のこと知ってるの?』
林子『まぁね。あの子、あたしと同じ事務所だから。一応モデルなんだよ?』
サクラ『そういえば、雑誌で見たことあるかも…』
林子『可愛い顔してるけど、性格に難有りって感じかな』

外見だけは、一流モデルにも負けてないんだけどね…と、頬杖をつきながら呟く。

ひまわり『でも、見た感じだとお似合いだよね。あの二人』
林子『だよねっ!!サクラちゃんもそう思う??』
サクラ『えっ?まぁ…確かにそうかもね』
林子『小狼は!??』
『おれも、思う……けど…』

ヒマワリの一言で、林子のテンションは再び急上昇を始めたらしい。
勢い良くサクラ達に同意を求めると、胸の前でガッツポーズをとった。

そして次に林子が発した言葉に、小狼は絶句することになる。
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